今、人生の迷いの中に居ますか?
私たちは、人生のどこかでアストラルの構築した、大迷宮へとしばしば迷い込むことがあります。
それは知らぬ間に足を踏み入れ、いつまでを彷徨うのでしょうか?
大半の人は、一切足を踏み入れることなく、人生を終えるのですが、少数の人が、人生のどこかで、必ず足を踏み入れることになるのが、アストラル大迷宮です。

それはいつも、心の迷い、弱さ、そしてタイミングが鍵になってしまうのです。
今日、あなたは飼い主と一緒に公園に散歩に来ていました。
お日様の光に照らされて、公園の緑を踏み締めていました。
とても気分が良くなったあなたは、鼻の前をひらひらと舞う蝶々に気を取られ、全力でダッシュしていました。

後ろの方から、あなたを呼ぶ飼い主の声が聞こえましたが、気にしていられません。
今大事なのは、目の前の蝶々だからです。
何度も見失いながらも、走り続けた挙句、気がついた時には、どこにいるのか分からなくなっていました。
振り返っても、叫んでも飼い主はいませんでした。
ふと前を見ると、変なピエロが手招きしています。

あなたは警戒しましたが、風船と飴玉をくれたので、味方だと認識しました。
ピエロが指差した方向には、楽しそうな門がありました。
せっかくだから、足を踏みれてみることにしました。

門をくぐると、世界の全てが踊っていました。
景色を眺めながら歩いていると、ふと前方に、たくさんの馬が回っているのが見えました。
近づくと、乗せてくれるというので、あなたは馬に乗せてもらいました。
普段よりも高い場所からの眺めは、最高でした。
鳥も、葉っぱも、石ころでさえ歌っていました。
ふと、離れた場所に見えたのは、ダイナーです。
お腹が空いてきたあなたは、馬から降ろしてもらうと、ダイナーの方へと、かけていきました。
入り口を潜ると、クラッカーが鳴り響きました。
あなたは、ピッタリ1000人目のお客さん。

なんでも、タダでご馳走してくれるというのです。
メニューを覗き込んで、ハンバーガーとポテト、それとステーキと、コーラをお願いしました。
お腹いっぱいに平らげたら、眠くなってきたので、少し眠ってしまいました。
オレンジ色の光が瞼を染めて、気がついたあなたは、ダイナーを出ました。
もったいないことをした。こんな時間は、そうそうないのに。
手当たり次第に、面白そうなものに乗りまくった挙句、まわるコーヒーカップがトドメになり、吐きました。

グロッキーになって倒れていると、一匹の犬が近づいてきました。
心配そうに、覗き込んできたので、あなたは大丈夫と言って、その犬と仲良くなりました。
一緒に遊びまわっているうちに、だんだんと空は暗くなってきました。
そして、その後、その犬は、飼い主に呼ばれたようで、連れられて帰ってしまいました。
あなたは、今までの幸福感が嘘のように消え、急に寂しくなりました。
そうだ、帰らなくちゃ。
入口の門の方へ駆け寄りました。

もうすっかり夜になっていて、門の外は暗黒がひしめいていました。
あなたは、怖くなって、踵を返しました。
他にどっか、明るい出口があるだろうと考えました。
しかし、どんどん灯りが消えていきます。
あっちに行けばライトが消えて、こっちに行けばライトが消えて、どんどん行き場が消えていきました。

最後に、灯りがついていた、建物が見えました。
入り口が空いています。
あなたは、そこへと駆け込みました。
奥へと入っていくと、ふと前方に、怪しい影が見えました。
不安を感じて、唸りました。
見えました。完全に敵意を剥き出しにしている、存在がそこにいたのです。

あなたは、ひとまず退散しようと後ろを振り返ると、後ろにもいたのです。
悪魔に囲まれたようです。
あなたは恐怖にすくみ上がりそうになりましたが、本能です。
怯んだら終わりだと思ったあなたは、悪魔に襲いかかりました。

悪魔もまた襲ってきます。
永遠に終わらない戦いが、一晩中、繰り広げられました。
翌朝。
あなたは、ボロボロになって倒れていました。
飼い主が、部屋に入るやいなやあなたに駆け寄り、抱きしめ、泣きました。

近くにいたおじさんが、言いました。
なんでこんなところに迷い込んだかね。
建物の看板には、こう書いてありました。
鏡の迷宮。
