世の中には、『オカルト』という物があります。
あからさまに妖しいものから、比較的文化に根付いてしまっている物もあります。
そういう意味では『初詣』も、オカルトの一種かもしれません。
中東辺りの宗教の方が毎日お祈りを捧げるのと、年に1回、初詣でお祈りを捧げる日本人は、頻度の違いだけであって、心理の面では、まったく同じ訳です。
さて、ここで一般的には、オカルトは、何の意味も無いものと捉えられがちです。
物理的には、その通りだと言えますが、潜在意識としては、実際の所、『現実』と『非現実』の境は、存在していません。
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あなたは最近知り合った男友達と、飲んでいました。
その時、彼は今までずっと黙っていたことを打ち明けてきたのです。
『俺の両親は、俺が小さい頃に2人とも交通事故で亡くなったんだ。だから、それから親戚をたらい回しにされて、すごく肩身の狭い思いをした。それから、今まで、ずっと地獄だったよ……、君と出会うまでは……』
その日が、キッカケとなって付き合い始めたあなたと彼は、それから幸せな月日を過ごしました。
そして、結婚が迫った、ある時、彼が浮かない顔をしていました。
あなたが『どうしたの?』と問いかけると、彼は『何でもない』と言いました。
だけど、あなたは、『なんでもないわけ無いでしょ』と問い詰めると、彼は重たい口を開きました。
『実は、俺、借金があって、このままじゃ結婚できない』と言うのです。
あなたは、動揺しました。
結婚間近に迫って、今のいままで黙っていたと考えると、とても裏切られた気持ちになりました。
とにかく、一旦冷静になって、理由を聞きました。
遊びやギャンブルだったら……、今だったら引き返せると思ったからです。
ところが違いました。
亡くなった親の残した借金だったのです。
しかも、彼がたらい回しにされた、親戚中からの借金だったのです。
それを聞いたあなたは、一瞬でも『引き返せるかも』と思った自分が恥ずかしくなりました。
金額を聞いたところ、残りは、なんとかなる金額でした。
とにかく、結婚前に全部を清算しようと、彼に持ちかけました。
あなたの貯金をすべて足した上に、残りは親に借りれば、何とかなったからです。
彼は、俺の問題だから……、と一端は断わりましたが、あなたが『2人の問題よッ!!』と説得をして、それで決着を付ける事になりました。
そして、お金をかき集めてきたあなたは彼に札束の入った封筒を渡しました。
これで、2人は晴れて結婚出来るのです。
彼からの連絡は途絶えました。
絶望の谷底に突き落とされたあなたは、ようやく騙されたことを理解しました。
考えてみれば、最初からおかしかった。
怒りの炎が全身を焼き尽くしそうになった時、電話が鳴りました。
霊安室に横たわった彼を確認したあなたは泣き崩れました。
彼は、親戚に借金を返済した後、交通事故にあったのでした。
彼の所持品を渡されたあなたは、カバンの中から指輪の入った箱を見つけました。
それから、3年……。
何もする気が起きなくて、ただ無気力に過ごしてきました。
指輪の箱は、あれ以来、開けていませんでした。
辛すぎるからです。
でも、もう3年も経ったし、そろそろ、はめてみようと思ったのです。
そして、薬指にはめようとしたところ、なぜか入りませんでした。
サイズが合っていなかったのです。
まあ、あの人の事だから……、と笑いそうになった時、それは見えました。
『えっ……』
指輪に掘られたイニシャルは、あなたの物ではありませんでした。
椅子から立ち上がったあなたは、横で寝ている彼を起こしました。
そして、私達は、建物を出て、車に乗り込みました。
彼は車を発進させました。
『面白い映画だったね!!』
と、お互いに談笑しながら走っていました。
次の瞬間、彼が『あっ』と声を上げて、ハンドルを急回転させました。
私が、視線を彼の横顔からフロントガラスに向けたとき、それは、トラックが激突してくる瞬間でした。
目を覚ました、あなたは、いつもどおりに、家を出ました。
教室についたあなたは、友達のヨウコに、言いました。
『ねぇ、聞いて。昨日マジで変な夢みたんだけど』
全ては、幻想なのです。
潜在意識というのは、幻想で出来上がっています。
どんな『オカルト』でも、うまく使えば、潜在意識をコントロールする事が可能です。
いくらでも、その思いは変えられるのです。
重要な事は、幻想だと分かった上で、映画を観ることなのです。
作り物だと分かっていても、泣けるのが潜在意識なのです。
幻想を真実だと偽り騙してくるのがオカルトです。
だから、『オカルト』その物に、潜在意識を支配されてはいけません。
『オカルト』はこちらが支配し利用する物なのです。
潜在意識は、作り物だと分かっていても、泣けるし、頭にくるのです。
それを利用するのです。